研究概要 |
針葉樹の環境適応機構について明らかにすることである。モミおよびキャラボクの針葉片を用いて光合成活性・クロロフィル蛍光・色素組成(特に針葉樹およびパイオニア樹木の葉片に比較的大量に含まれているα-カロチン)を測定することにより、季節的な温度・光への適応機構を調べた。草本植物の葉にはほとんど含まれていないalpha-carotene(a-Car)は、針葉樹の葉片には全Car(a-Car+beta-Car)の15%以上がa-Carであり、さらに、a-Carはb-Carと置換する形で存在しており、さらに、a-Carとlutein量が一定であることが一昨年の本共同研究により示されている。これらのことから、a-Carを中心として年間の色素組成を変化させることで過剰エネルギーの熱放散を誘導するviolaxanthin cycle(Vio cycle)に関与する色素量が増大するが、実際にNPQ(non-photochemical quenching)との関係は示されていなかった。このため、モミおよびキャラボクを用いてa-Car,Vio cycle色素との関係を調べたところ強光下ではa-CarとNPQとに直線関係が得られ、実際にa-Carを中心にした色素組成変化がエネルギー散逸の制御に重要であることが明らかとなった。さらに、針葉樹では夏緑樹と比較し強光下でのlutein epoxideの含量が高く、寄生植物で報告されているlutein cycleが働いている可能性が示された。
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