1.マツノマダラカミキリ成虫から離脱したマツノザイセンチュウ数の経時的調査 昨年度の接種実験で得られた病原力の異なるマツノザイセンチュウ(以後線虫)アイソレイトを、人為的にマツノマダラカミキリ(以後カミキリ)成虫に保持させた。その後カミキリ成虫を個別飼育し、カミキリ虫体から離脱した線虫数を経時的に調査した。カミキリ成虫の日齢が60日に達するまで継続し、それまでに離脱した総線虫数とカミキリ体内に残っていた線虫数を調べ、離脱に成功した線虫の割合(伝播率)をアイソレイトごとに計算した。実験の途中で死亡した個体については、死後1日以内に解剖し体内に残っている線虫数を調べ、生存期間中の伝播率を算出した。本実験は現在も進行中で、アイソレイト間の比較および解析は来年度行う予定である。 2.マツ樹体内におけるマツノザイセンチュウの増殖力の調査 病原力の強いアイソレイトと弱いアイソレイトを別々に1本のマツに接種した。接種から1ヵ月後、6ヵ月後および9ヵ月後にマツ樹体内の線虫密度を調べた。また、それら両アイソレイトを同じに、あるいは時期をずらして1本のマツに接種した。その後上記と同じ時期に樹体内で増殖した線虫を回収してそれらのDNAを調べ、マツ樹体内における線虫の個体群構造を解析した。その結果、病原力の強いアイソレイトのみを接種したマツでは、平均で160-379頭/gの線虫密度であったが、病原力の弱いアイソレイトのみを接種したマツでは、時期を問わず全く線虫が検出されなかった。一方、両アイソレイトを重複接種したマツでは、線虫を接種する順序および線虫を回収する時期にかかわらず、病原力の強いアイソレイトがマツ樹体内で優占した。 3.人工飼料飼育によるマツノマダラカミキリ終齢幼虫の生産 昨年度に引き続き、人工飼料を用いてカミキリ終齢幼虫を大量生産した。この方法で得られた終齢幼虫は10℃の恒温室で保存し適宜上記実験1で使用した。来年度必要なカミキリ頭数も概ね確保できたため、終齢幼虫の生産は今年度で中止とする。
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