研究概要 |
代表的な亜高山帯樹種であるコメツガ(Tsuga diversifolia)とトウヒ(Picea jezoensis var.hondoensis)を対象に,その年輪幅および年輪内密度値に及ぼす気候要素の影響を明らかにした。 南アルプス仙丈ヶ岳標高2200mにおいて成長錐を用いて、コメツガ(34個体,50コア)とトウヒ(32個体,55コア)のコア試料を採取した。軟X線デンシトメトリにより、年輪幅と年輪内最大密度を測定し、生育地を代表とする時系列であるクロノロジーを作成した。コメツガの年輪幅では過去459年間、年輪内最大密度では388年間のクロノロジーを、トウヒの年輪幅と年輪内最大密度では、いずれも356年間のクロノロジーを作成することができた。これらのクロノロジーと松本、飯田、甲府の3地点で平均した月平均気温および月降水量(期間:1898〜2001年)との関係について単回帰分析を用いて気候応答を解析した。コメツガの年輪幅は前年夏期の気温及び降水量,4月の気温と有意な相関を示し,トウヒの年輪幅は当年夏期の気温の曜日降水量と有意な相関を示した。コメツガ及びトウヒの年輪内最大密度指数は、夏期の月平均気温および降水量と非常に高い相関を示した。このことから、コメツガとトウヒの年輪幅および年輪内最大密度は主に夏期の気温と降水量を反映して変動していることが明らかになった。 以上の成果は,6th International Symposium on Plant Responses to Air Pollution and Global Changes,第54回日本木材学会大会ほかにて口頭発表した。
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