研究概要 |
選択的リグニン分解菌Ceriporiopsis subvermisporaは,木材腐朽初期にリノール酸などの不飽和脂肪酸を大量に産生する.従って,不飽和脂肪酸が脂質の過酸化の前駆体であるものと考えられる.そこで,本研究は,不飽和脂肪酸の生合成に注目し,今回は,C.subvermispora,及び,白色腐朽菌のモデル種であるPhanerochaete chrysosporiumより脂肪酸不飽和化酵素遺伝子のクローニングを試みた. データベースを用いて,既知の不飽和化酵素のアミノ酸配列から保存性の高い領域を検索し,それを基にプライマーを設計し,ゲノムDNAを鋳型としてPCR,また,total RNAを用いて5'-及び3'-RACEを行った.その結果,P.chrysosporiumからΔ12-fatty acid desaturase(Pc-Fad2と命名)とΔ9-fatty acid desaturase(Pc-Fad1)のcDNAを取得した.これらの遺伝子のアミノ酸配列には,既知の不飽和化酵素に特徴的なhistidine-rich motif(His-box)が3箇所存在した.また,SOSUI解析の結果,3箇所の膜貫通ヘリックスも存在し,これらの不飽和化酵素は膜結合型酵素であることが強く示唆された.Pc-Fad1については,C末端側にcytochrome b_5 heme-binding domainが存在した.取得した不飽和化酵素遺伝子を大腸菌の発現ベクターに連結,大量発現・精製を試みた.その結果,発現量が少ないものの予想される分子量を有するバンドをSDS-PAGEで確認した.なお,C.subvermisporaで増幅された遺伝子断片については,既知の脂肪酸不飽和化酵素と相同性が見られなかった.
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