研究概要 |
本研究ではシロアリの‘におい'識別メカニズムの特徴を理解することを目的とする。 本年度は(1)オオシマミドリカミキリムシ由来のシロアリ忌避物質Iridodialの化学合成(2)カラマツ心材蒸煮処理材の熱水抽出物(HWE)のにおい識別分析(3)種々の‘におい'存在下でのシロアリの摂食行動における口器運動の観察および大顎の咬合力測定を行った。 昨年度、ヒトには香水のような芳香を有するオオシマミドリカミキリムシの防御物質がシロアリに忌避効果を示すことを明らかにし、本年度、候補物質の化学合成および分離・分析によりその立体化学構造を1R,2S,5S-iridodialと決定した。 次にシロアリが好む‘におい'と考えられるHWEを‘におい識別分析'に供試し、においの質と量との観点から各基準ガスとの官能評価比較を行った。HWEは各ガス軸との類似性評価ではアンモニア軸において基準ガスの測定パターンと高い数学的類似性を示した。一方、人間の臭気相当の補正を実施した臭気寄与解析では硫化水素、硫黄系、アンモニア、アミン系、有機酸系、アルデヒド系への寄与が大きいことが明らかとなった。 さらに、様々な‘におい'刺激存在下におけるシロアリの摂食および攻撃行動への影響を調べるため、これらの行動の起点となる咬合力を測定した。大顎の咬合力は、大型のネバダオオシロアリ擬職蟻を用いた場合、圧力換算で約0.007kPa、同種の兵蟻を用いた場合はその10倍の0.07kPaであった。
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