研究概要 |
(1)平成16年度は、サクラマスの血中ホルモン量変動を解析するため、ELISA法によるコルチゾル、テストステロン、エストラジオール-17β、11-ケトテストステロン、および17,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オンの測定系を構築した。 (2)共同研究機関である水産総合研究センター中央水産研究所日光支所において、コルチゾルの投与(2mg/尾)がサクラマス銀化魚の降河行動に及ぼす影響を実験水路内で行動学的に調べた結果、銀化魚の降河尾数の割合はコルチゾル投与群(76%)が対照群(23%)よりも高くなることが判明した。そこで実験魚の血中コルチゾル量を測定したところ、対照群が平均約5ng/mlであったのに対して、コルチゾル投与群では平均約20ng/mlと増加していた。このことから、銀化魚の降河行動の発現がコルチゾルによって促進されたことが考えられた。 (3)平成16年から17年にかけて、岩手県気仙川(全長約44km)等の河川においてサクラマス銀化魚(ヒカリ:降河型)および河川残留魚のフィールド観察・サンプリング調査を行った。気仙川では河口から約10km(下流)、20km(中流)、30km(上流)に調査点を設定し、採捕を行った。その結果、下流では銀化魚の特徴を呈する降河魚と思われる魚が、上流では早熟個体等の河川残留型魚が、また中流では両者が混在して採捕されることが明らかとなった。各調査点の採捕魚の血中コルチゾル量を測定したところ、下流ならびに中流で採捕された銀化魚のコルチゾル量は、上流域に生息する河川残留型魚よりも高くなる傾向が明らかとなった。 以上の結果から、サクラマスの銀化魚では降河回遊期にコルチゾル量が増加すること、このホルモンの上昇が降河回遊行動の発現促進に関係することが示唆された。
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