(1)平成17年3月、岩手県気仙川(全長約44km)の河口から35km(上流域)、20km(中流域)、および7km(下流域)の3調査地点を設定し、それぞれの地点において8:00時から18:00時までサクラマスを観察するとともに一部を採捕し、血中コルチゾル量をEIA法により測定したところ、下流域で採捕された銀化魚(平均約19.4ng/ml)では上流域(平均約4.3ng/ml)で採捕された河川残留型魚よりも血中コルチゾル量が高いことが明らかとなった。また各個体のコルチゾル量を比べたところ、特に下流域の銀化魚の血中コルチゾル量は、昼間採捕された個体では低く、夕方に採捕された個体では高くなる日内変動を示す傾向が見られた。また行動観察の結果、下流域では夕方になると銀化魚と考えられる個体が淵下流の浅瀬に集群する様子が観察された。 (2)そこで平成18年4月、水産総合研究センター中央水産研究所日光庁舎において、FRP艀化水槽にサクラマスの銀化魚および河川残留型魚(早熟雄)を収容し、14:00、18:00、22:00、2:00、6:00、および10:00時にそれぞれ5尾ずつをサンプリングして血中コルチゾル量の変動を調べた。その結果、銀化魚では夕方から深夜にかけて血中コルチゾル量が上昇する変動を示したのに対して、早熟雄では観察されなかった。以上の(1)と(2)の実験結果から、サクラマスの銀化魚では昼から夕方にかけてのコルチゾル量上昇があること、またこのようなコルチゾル量の日内変動が夕方から夜にかけての銀化魚の降河回遊行動を誘起するものと考えられた。 (3)平成18年3月にも岩手県気仙川において上記(1)と同様の研究を行い、現在血中コルチゾル量を測定している。
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