研究概要 |
二枚貝キャッチ筋に観察される省エネルギー消費の筋収縮現象であるキャッチ運動は,収縮制御タンパク質twitchinに存在するリン酸化部位D1およびD2のリン酸化・脱リン酸化によって制御されている。本研究では,キャッチ運動の制御機構を分子レベルで明らかにするために,ムラサキイガイ前足牽引筋(ABRM) twitchinのリン酸化部位D1およびD2のリン酸化部位を他のアミノ酸に置換した変異体を大腸菌で発現させ,その機能解析を行なった。まずABRMのMg^<2+>-ATPase活性を変異体存在下で測定した。D1リン酸化部位をアラニンに変異させたTWDIAおよびアスパラギン酸に変異させたTWDID存在下では,活性に変化はみられなかった。一方,D2リン酸化部位をアラニンに変異させたTWD2AはMg^<2+>-ATPase活性を約60%阻害し,アスパラギン酸に変異させたTWD2Dは,活性に変化を及ぼさなかった。次に,リン酸化部位に結合するタンパク質を,ウェストウェスタン法および固相結合実験を行なって探索したところ,脱リン酸化状態のD1には約40kDaのタンパク質が,脱リン酸化状態のD2にはアクチンおよびパラミオシンが結合した。また,変異体がリン酸化すると,それらのタンパク質とは結合しなくなることが分かった。以上の結果から,twitchinはそれらのタンパク質とリン酸化依存的に結合し,リン酸化部位のうち特にD2がキャッチ運動の制御により深く関与していることが示唆された。
|