飼料に関連する既存研究では、指定配合飼料の普及は国内市場の環境悪化にともない経営が厳しくなった配合飼料メーカーと、畜産物輸入自由化の進展にともない国際的な価格競争への編入を余儀なくされた国内畜産農家との「連携」、すなわち対立から協調への変化の成果として把握されている。しかしこうした理解は大規模畜産農家に限定されたものである。そこで『中小規模畜産農家における畜産物生産と指定配合飼料調達システム』では、飼料メーカーが指定配合飼料に傾注するなかでの中小規模畜産農家における指定配合飼料の調達行動と課題について、三重県の養鶏農家を事例に考察した。そこでは、中小規模畜産農家における組織的対応においても指定配合飼料は生産物差別化やコスト削減に有効であり一定の成果を享受することができるが、配合飼料メーカーをとりまく環境変化にともなう合併、生産拠点の整理・縮小、委託生産の拡大など供給条件が大幅に変化しており、また指定配合飼料を利用した差別化は大規模養鶏農家においても取り組まれていることから、むしろ不安定な供給条件のなかで大規模養鶏農家と同じ土俵での競争に編入されていることを明らかにした。その上で、地域バイオマスの飼料利用を含めた新たな飼料調達の必要性について言及している。 食品加工残渣の飼料利用についてすでにいくつかの蓄積はあるが、その中心は再生利用の経済性や可能性についての考察が中心となっており、需給接合の問題について言及したものは少ない。『食品廃棄物の飼料利用-食品廃棄物の飼料化事業の具体的展開と製品利用問題を中心に-』では、食品リサイクル法の制定・施行に先駆けて取り組まれた札幌市における都市厨芥ならびに三重県における菓子加工残渣の飼料利用を事例に、需給接合におけるそれぞれの課題について言及した。
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