1980年代以降における食品加工残渣・廃棄物の飼料利用におけるリサイクル経路の変化とその要因、およびそこで発生する需給調整のあり方について、ビール製造副産物の飼料利用を対象とした事例調査に基づき考察を行なった。また、当該研究の最終年度であることから、2006年より「飼料自給率向上戦略会議」の下で策定・実施されている「食品残さ飼料化行動計画」について整理・検討するとともに、需給接合システムの観点から今後の課題について考察を行なった。 食品関連産業から排出される残さは、製品等の季節変動の影響を受け量的・質的変動が不可避であるとともに、処理・売渡しに係る煩雑性とコストに強く影響される。また、需要者である畜産農家における調達基準は、一般流通飼料に規定されている。排出事業者と需要者との間の需給接合が全く異なった論理の中で行なわれているのである。「食品リサイクル法」施行により、飼料化を含めて食品廃棄物の再生利用が進められているが、これらの要因からその経路は広域・複雑化しており、地域に立地する中小規模の排出事業者・畜産農家は、需給接合に参画することができなくなっている。 現在実施されている「食品残さ飼料化行動計画」においても上記問題については触れられていない。「食品リサイクル法」や同計画の下で進められている情報提供・共有ならびに中間処理事業者の育成のみならず、地域内に立地する中小規模畜産農家の育成を図るとともに、量的・内容的変動のある食品廃棄物を飼料資源として柔軟に活用するため、現在の配合飼料中心の飼料給与システムを見直していく必要がある。中間処理事業者のみならず地域農家を含めてシステムを再構築することによって、広域・複雑化する要因である煩雑性や量的・内容的変動問題を解消することが可能となる。
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