研究概要 |
本研究は,浄化型排水路の整備前後における水質浄化機能の把握を目的として,平成16年度より実施し,18年度が最終年となった。調査はほぼ計画どおり実施できたが,秋の豪雨によって観測器等が被害を受け,降雨時の連続観測は十分な成果が得られなかった。以下に整備前後の水質浄化効果の変化について概要を示す。 平水時の浄化型水路に整備した区間の濃度を比較すると,T-NとNO3-Nについては,おおむね改修前より改修後に流下に伴う濃度低下がみられた。とくにNO3-Nは,改修後の時間経過によって濃度の低下率が大きくなる傾向にあった。改修区間以外で流下にともなう濃度変化を比較したところ,濃度低下率が小さかった。このことから,浄化型水路への改修によって,窒素成分の濃度を低下させる効果が生じていると考えられる。改修区間におけるNO3-N/Cl-の差(Δ)を比較した。NO3-N/Cl-は生物的作用によるNO3-N除去を示す指標であり,NO3-N/Cl-の低下はNO3-Nの生物への吸収や脱窒により生じるとされている。その結果,水路改修区間では流下によってΔが負となった。これは,流下過程で吸収や脱窒によりNO3-N濃度の低下が生じたことを示唆する。また,改修直後と比べ,1年経過した平成18年では,改修前Δとの差が拡大している。すなわち,この区間では改修後,時間とともに河道周辺の植生や河床の付着藻類などが増殖し,NO3-Nの吸収や脱窒作用が増大したと考えられる。 リンについては,水路改修の前後とも,流下にともないリン濃度は低下したが,T-Pでは改修後よりも改修前の濃度低下が大きかった。SSについては,改修後に流下にともない濃度が上昇する場合もあった。この原因は,低水路の形状によるSSの巻き上げなどによると推測されるが,比較するには濃度レベルが低いため,さらなる調査が必要である。 流出負荷は降雨時に多く発生することから今後は降雨時の調査を実施する必要がある。
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