本年度は代表者らが開発を進めてきた一方向凍結装置の改良を進め、また新たに購入した顕微鏡用CCDカメラを用いて、様々な濃度のNaClを含むTHF水溶液で飽和した異なる粒径のガラス粉体の一方向凍結実験を行った。ガラス粉体中におけるTHFクラスレートハイドレートの形成過程を顕微鏡下で観察した結果、THFハイドレートにおいても氷同様、レンズ状の結晶成長が生じること、結晶の形がNaCl濃度によって樹枝状、間隙状と異なることが明らかになった。また、氷とハイドレートのレンズ状結晶の成長速度の比がそれぞれの溶液の自己拡散係数の比に依存することが示唆された。これらの結果をまとめ雑誌に公表した。 同様の一方向凍結実験を窒素化合物、鉛、カドミウムで汚染した土壌、ガラス粉体について行い、凍結過程における土中の水・熱・物質移動過程を調べた。この際の物質移動を促進・抑制する方法として、吸引法を組み合わせた実験も行った。また、これらの知見を元に、土壌の凍結浄化法について検討した。これらの結果の一部を、雑誌に公表すると共に、それぞれ関係諸学会で発表した(含、日本雪氷学会平田賞)。 次に、前もって染色した土壌微生物を凍結実験系に加え、試料の凍結融解過程を蛍光顕微鏡を用いて観察した。この際、まず、様々な試薬、試料、微生物種を用いて観察を繰り返し、凍結実験系に適した試薬や試料を選定した。その後、観察動画の解析から、凍結にともなう土中の微生物の位置や数量、活性の変化、アイスレンズによる微生物の吐き出し過程を明らかにした。これらの結果の一部を関係学会で発表した(含、土壌物理学会賞)。
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