研究概要 |
平成17年度は色素とNaCl混合水溶液をトレーサとして用いることで,均質地盤および層地盤での移流分散と遅延特性を検討した.物質移動実験には平面二次元場を模擬した実験装置を使用して定常流を有する均質地盤ならびに層地盤を形成し,平均粒径の異なる3種類のケイ砂を充填して動水勾配を種々に調整することで透水性と物質挙動の関連性を検討した.また,色素トレーサの移流分散挙動に関する時系列画像を基に画像解析を適用することで分散係数と分散長,トレーサ移動速度,遅延係数を非破壊で推定した.さらに,NaCl濃度センサーを浸透場に埋設することにより,4地点での破過曲線を計測し,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた逆解析により分散長と遅延係数に加えて,汚染源特性を表す汚染源規模と物質漏洩時間を逆推定した. 画像解析より分散係数は浸透速度に依存することと試料粒径の減少に伴い推定値は増加すること,分散長は試料の粒径に依存する傾向を示す結果が得られた.また,実験場での縦・横分散長の比は約10であり,既往の研究例と比較することで画像解析手法の妥当性が検証された.特に,遅延係数は試料粒径や流速の低下に応じて増加する結果となり,多くの研究例にて遅延現象を考慮していない色素トレーサの遅延特性に関して新たな知見を得ることができた. 一方,逆解析による物質移動と汚染源特性の推定ではGAにより物質移動と汚染源特性の同時推定が可能であることを示した.また,層地盤の分散長と分散係数の推定に各層単独の計測結果と場全体の計測結果を用い,場全体での推定値は上流層と下流層の推定値の間に存在する傾向があることを示した.さらに,下流側層に対する分散長の推定値は上流側層の影響を受けて変化することが示されたことから,パラメータ推定において観測点の地盤特性のみならず移行経路にある地盤特性を踏まえたパラメータ推定が望まれることを結論付けた.
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