沖縄県では、農業地域からの赤土流出の現状把握および、様々な赤土流出防止対策の影響評価のための赤土流出予測法が求められている。営農地では、土地利用状況、作物の生長や土壌表面の状態変化などのために土壌の侵食性が時間・空間的に大きく変わる。その為に、有効な予測手法が開発されていないのが現状である。これまで沖縄県では、一般的にUSLEが用いられてきた。USLEは単一圃場の年間単位の土壌侵食には適用範囲が広いが、土地利用の複雑な流域での経時的変化については適用範囲外であるという問題があり、沖縄で求められているモデルとして適切ではないといえる。そのような中、USLEの開発者であるUSDAは1985年からUSLEの弱点を克服すべく新たにWEPPモデルの開発を行った。WEPPモデルは作物や土壌状態の時間的空間的変化を追跡しながらの土壌侵食をシミュレーションでき、また営農における様々な人的要因も入力できるところに特徴がある。 上記の背景から、本研究ではUSLEと開発元を同じくするWEPPモデルを用いて、赤土流出防止対策として行われている対策を定量的に評価する。本年度は沖縄県今帰仁村嵐山地区で行われている耕土流出防止事業の中で、「団粒土壌を用いた排水改良による流出防止対策」について実測値と計算値の比較を行ない、WEPPモデルの適用性の検討を行った。 その結果、土壌のパラメータについて実圃場において観測した値を用いた場合、計算値が大きな値になることが認められた。さらに、パラメータの値を修正して最適化した場合には、計算値と実測値は概ね一致した。 次年度以降は、他の対策について検討を進める。
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