本年度は、一般に親水機能と呼ばれている概念の整理を行った。各種の水利施殻(水路工、ため池、ダムなど)によって人工的に形成される水辺空間を考えるために、まず自然に形成された水辺空間として河川を対象とし、その整備を行う上で親水機能がどのように捉えられているのかをまとめた。その結果、「心理的満足機能」「レクリエーション機能」「公園機能」「生物育成機能」「防災機能」「景観機能」という6つの機能が抽出された。これに基づいて現行の設計基準(河川砂防技術基準)を分析し、(明示的ではない形で)求められている親水機能と判断される性能を明らかにした。このことによって、現行の基準では不足するもの、表現を大きく改めなければいけないもの、表現の仕方自体を再検討しなければいけないもの等がわかった。また、こうした一連の分析作業を通して、河川構造物以外の水利構造物の設計基準を性能規定化するための作業方法も確立することができた。一方、性能照査にあたってはLCCという観点も重要であるが、中でもその算出が困難なリスクと維持管理に関わる費用の取り扱いについての基礎的な検討も行った。リスクについては、損害保険数理や健康リスクの考え方を援用することで、簡便な確率論的取り扱いの可能性があることがわかった。また、リスクマネジメントで広く用いられているフォールトツリーを作成することで、維持管理に必要な作業を整理することもでき、コスト算出の体系化に向けての可能性を示すこともできた。この他、次年度以降に予定しているアンケート調査や画像解析などのための機器設備を整備した。
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