研究概要 |
本研究では,土壌面日射環境の不均一性によって生じる小規模移流現象を考慮に入れて,圃場の消費水量を定量化することを目的としている.今年度は,作物圃場の水消費成分を構成する土壌面蒸発量と作物蒸散量のうち,小規模移流現象を考慮に入れて土壌面蒸発量推定モデルの構築を行った.本モデルは,土壌中の熱および水分同時輸送の基礎式を解いて求められる土壌面の体積含水率および温度を用いて土壌面蒸発量を定量化するものである.実際の圃場では作物体による陰が土壌面に形成され,小規模移流現象が生じるが,陰は時間の経過とともに移動する.小規模移流現象が時間的・空間的にどのように変化するか把握するため,作物体によって形成される陰の刻々の変化をシミュレーションし,土壌面における日射量の空間分布および時間変化を推定した.土壌面蒸発量推定モデルの妥当性を検証するため,圃場実験を行った.実験では土壌中の蒸散の影響を除くため,作物形態モデルを圃場に設置した.まず,土壌面日射環境の推定手法の精度を確認するため,土壌面において日射量の多点観測を行った.また,小規模移流現象の空間的・時間的な変化を把握するため,刻々の風速・風向を測定した.さらに赤外線放射温度カメラを用いて,小規模移流条件下における土壌面温度の空間分布を明らかにした.また,シミュレーションモデルのインプットデータを得るため,純放射量,地中熱伝達量,空気中の温度・湿度,地温および土壌水分などの微気象観測を行った.さらに,土壌面蒸発量の時間変化および空間分布を実測によって明らかにした.シミュレーションモデルで計算した土壌面蒸発量と実測値はよく一致していた,このモデルによって,小規模移流条件下における土壌面蒸発量を精度よく推定できることが明らかになった.
|