食品と同様の方法で青果物を無菌的に包装することは技術的に可能である。この無菌包装とMA包装(ヒートシールによる密封包装)との組み合わせは、青果物集荷場からの微生物増殖をコントロールできる技術となるため、近年、化石燃料由来のプラスチックフィルムを用いたカット野菜の密封包装は、その日持ち向上に大いに貢献している。 一方、生分解性プラスチックフィルムは微生物分解によりH_2OとCO_2に分解されるため、環境負荷低減やごみ削減の観点から、その利用は促進されつつある。更に、生分解性プラスチックフィルムは基本的にカーボンニュートラルの性質を持つ。しかし、生分解性プラスチックフィルムは青果物の包材として利用されていないのが現状である。 本研究は、青果物流通において生分解性プラスチックフィルムの利用の可能性を検討し、更に青果物の品質および微生物の生育をどの程度抑制するかを調べたものである。測定では、ピーマンを供試材料とし、生分解性プラスチックフィルムを用いて、ピーマンを10℃、7日間生分解性プラスチックフィルム内で密封保存(MAP)し、ピーマンの重量減少率、色彩色度、硬度、アスコルビン酸濃度、生菌数(一般生菌数、大腸菌群数、カビ・酵母数)およびフィルム内のガス濃度を測定し、これらを低密度ポリエチレンフィルムを用いピーマンを密封保存した場合と、有孔低密度ポリエチレンフィルムをヒートシールしてピーマンを保存した場合と比較、検討した。 この結果、生分解性プラスチックフィルムは品質の観点から他のフィルムと比べ有意な差が見られず、生菌数は最も抑制できることが示された。このことは青果物集荷場における静菌・滅菌システムを考える際、包装材料の観点から大きな知見を与えるものである。
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