研究概要 |
21世紀は,グローバルな視野から食の安全が問われる時代である.農産物が国際的に大量に流通する時代を迎えた今日,いかにして食の安全性を確保し,人の健康を守るかが問われている.食の安心は科学的に裏付けされた安全によって支えられるものであり,人類の持続的発展を根幹から支えるべきものである.食の安全は最も身近な問題でありながら,これを確保する技術については未開発な部分が多いのが現状である.そこで,本研究では,アグリフードチェーンにおける食品の微生物的安全性確保のための微生物挙動の動的予測と評価について,微生物挙動に関する情報収集と数理モデルによるアプローチを行った.まず,微生物増殖・死滅予測モデル構築のための速度論的データを,インターネット等を通じて入手するとともに,実験により収集した.このデータを分析し,モンテカルロ法を用いた確率予測微生物学的手法により,微生物的危害を平均値としてではなく,分布として評価する方法を確立し,本方法が賞味期限や棚持ち期間の決定に役立つことを示唆した.つぎに,赤外線加熱殺菌モデルを構築し,数値流体力学(CFD)と輻射伝熱モデル(モンテカルロ法によるランダム熱移動モデルと形状係数による熱移動モデル),殺菌速度モデルの組み合わせにより,イチゴ果実の表面殺菌予測を行った.この結果,赤外線殺菌の有効性が示された.また,アドヘヤ糊による赤外線加熱過程の可視化とCFDによるシミュレーションを行い,表面温度の時空間分布予測も行った.醤油のマイクロ波加熱殺菌において重要となる誘電率を測定し,マイクロ波による醤油の加熱特性を明らかにした.以上,本研究は,アグリフードチェーンにおける微生物的安全性評価に有用となる成果である.
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