研究概要 |
本研究は、低温下における植物の水輸送の動態とアクアポリンの役割を解明することを目的としている。H16年度は個々のプロトプラストの水透過率を高精度で計測する独自手法を確立した。H17年度はこの手法をさらに発展させ、植物細胞の主要な膜系である細胞膜と液胞膜の水透過率を分離して評価する方法の開発に取り組み、予想通りの成果を挙げることができた(現在投稿中)。従来は、細胞膜より液胞膜の水透過率は十分大きいと想定され、細胞膜の水透過率のみが注目されてきた。しかし本研究の手法を用いてダイコンプロトプラストについて測定したところ、細胞膜、液胞膜の水透過率の大きさは通常条件(25℃、水ストレスを与えない条件で測定)では同等であり、ともに高い水透過率を持つことが明らかになった。すなわち本実験の結果は、細胞内水バランスの調節および細胞間水輸送に細胞膜と液胞膜の水透過率がともに重要であることを意味する。また、H17年度は、低温処理が根の吸水機能およびアクアポリンに及ぼす影響に関する実験に着手した。人工気象室の中で水耕栽培したイネを材料に、植物体地上部温度を25℃に保ったまま地下部の温度を4℃に冷却し、根の吸水能力とアクアポリンの発現レベルを経時的に測定する実験系を確立した。根の吸水能力はsap flow法で計測できることが確認された。イネはアクアポリン分子種を33種類持つことが最近報告され、その中でも根で重要な役割を果たす分子種が推定された(Sakurai et al.2006, PCP46:1568-1577)。そこで、これらの分子種に着目し、アクアポリンのmRNAレベルをRT-PCR法、タンパク質量をイムノブロット法で解析する体制を整えた。
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