研究概要 |
精子や卵子となる生殖細胞は、来るべき受精に備えるために1回のDNA複製後2回の連続した分裂(減数分裂)を行い、DNA数を半減する。第一減数分裂では相同染色体の分離が起こるが、姉妹染色分体の結合は維持されたまま第二減数分裂へと移行し、第二減数分裂後期になってから姉妹染色分体が分離する。このような減数分裂に特有な染色体の分離を行うためには、体細胞分裂とは異なる分子機構を生殖細胞が備えていなければならない。近年、酵母からヒトまでの真核生物において、DNA複製期から分裂後期の開始まで複製された2本の姉妹染色分体を結合するコヒーシンと呼ばれる蛋白質複合体が見つかり、コヒーシンの解離によって染色体の分離が起こることが分かってきた。 本研究では、哺乳類において、減数分裂特有の染色体の結合・分離を制御する分子機構を解明するために、マウスRec8およびそれを制御すると考えられる他の分子(Separase, Securin, Cdc20,Cdh1等)に着目して研究を行っている。Rec8は第一減数分裂中期から後期への移行時に、染色体腕部から消失し、そのことが相同染色体の分離に繋がると考えられている。申請者は、抗Rec8抗体の卵母細胞への顕微注入実験により、この第一減数分裂後期に起こる染色体腕部Rec8の消失が相同染色体の分離に必要であることを証明した。さらに、Securinの過剰発現実験により、Securinにより腕部Rec8の消失が抑制的制御を受けることも証明した。また、大腸菌由来レコンビナント蛋白質を精製して抗原として利用することにより、抗Separase抗体、抗Cdc20抗体、抗Cdh1抗体を作製した。これらの抗体を利用して、次年度ではさらに研究を押し進める予定である。
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