膀胱は、最終的にそれを構成する平滑筋細胞が収縮することによって尿を排泄する。膀胱平滑筋の収縮は、細胞膜の電気的な興奮を伴う。この興奮は、微小電極を平滑筋細胞に挿入することによって活動電位として記録される。また、膀胱の収縮には平滑筋細胞膜上のムスカリン受容体が重要な役割を果たしている。しかし、本研究課題を含め、活動電位を調節する仕組みは不明である。そこで、これらを解明する一環として、ムスカリン受容体の刺激によって発生する膜電位反応を記録・解析し、回腸平滑筋の同反応と比較した。実験には、多くの研究実績と報告のあるモルモットの膀胱体部および回腸縦走筋の平滑筋条片を用いた。 [結果]膀胱平滑筋において低濃度のカルバコール(CCh、1μM)を適用すると、自発性活動電位における緩徐脱分極相の傾きが増大し、活動電位の放電頻度が増加した。放電頻度の増加は、静止膜電位の変化を伴わない場合と、5-10mVの脱分極を伴う場合があった。活動電位の自発性放電が見られない標本にCChを適用すると、膜の脱分極を伴って活動電位が誘発されるようになった。これらの膜電位反応は、回腸縦走筋に1-2μMのCChを適用した場合と同様であった。高濃度のCCh(10μM)を適用した場合には、発生した脱分極の大きさは1μMの場合と変わらず、濃度依存性は認められなかった。また、活動電位の放電頻度が増加する程度も変わらなかった。一方、回腸縦走筋では、ムスカリン受容体作動性陽イオンチャネルの平衡電位である-10mV付近まで達するような脱分極が誘発され、活動電位の脱分極ブロックが生じた。以上の結果は、モルモット膀胱平滑筋における脱分極反応は腸管平滑筋の場合と比較して小さいことから、ムスカリン受容体作動性陽イオンチャネルの分布密度が少ないか、あるいは腸管平滑筋とは別種のチャネルが脱分極の発現に関与している可能性がある。
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