次世代が餌の豊富な季節に生まれるように、妊娠あるいは孵卵期間を逆算して、決まった時期に交尾行動を起こすメカニズムを季節繁殖という。温帯に住む鳥類は日長が長くなると、性腺が発達するという明瞭な光周反応を示す。古くから甲状腺除去が季節繁殖に異常を来すことが様々な脊椎動物において知られており、甲状腺ホルモンは何らかのレベルで光周性の制御に関与するといわれていたが、我々は甲状腺ホルモン活性化酵素(Dio2)の光誘導が光周性の制御に重要であることを明らかにした。しかし、生物がいかにして季節(日長)を測っているのかという本質的な疑問は未解決のままである。これまでにDio2遺伝子の光誘導は、夜間のある限られた時間帯(光感受相)にのみおこることを報告しており、この時刻依存的な光誘導のメカニズムの解明から季節性測時機構の本質を明らかにすることが可能になった。 そこで本研究ではDio2遺伝子のプロモーターの解析を通じて時刻依存的な光誘導のメカニズムを検討している。まずinverse PCR法によりウズラのDio2遺伝子のプロモーター領域約2.7kbをクローニングし、ルシフェラーゼアッセーに使用するコンストラクトを作成した。その後、JEG-3細胞を用いてルシフェラーゼアッセーを行なった。また鳥類において光周性の中枢が存在することの知られている視床下部内側基底部(MBH)から得た核抽出物を用いてゲルシフトアッセーも行ない、Dio2の光誘導に関与するシスエレメントの同定に成功している。今後、時刻依存的な光誘導のメカニズムの解明に取り組んでいく。
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