肉牛に見られる脂肪交雑は牛肉の商品価値を高める上で非常に重要な形質となっている。この脂肪交雑は筋肉内脂肪の蓄積によるものだが、その形成機序は不明な点が多い。筋細胞と脂肪細胞はどちらも同じ起源細胞に由来するが、この細胞がどのように分化を方向付けられるのかはまだ解明されていない。Wnt遺伝子は形態形成や初期発生に重要な因子であり、このWntが筋細胞あるいは脂肪細胞への分化を導く因子である可能性が示唆されている。そこでウシにおけるWntの脂肪分化への関係を明らかにする目的で本研究を行なった。昨年度はλファージを利用して、ウシ(ホルスタイン種)骨格筋組織cDNAライブラリーをすでに作成した。このウシ骨格筋cDNAライブラリーを元に、PCRで得られたウシWnt10B遺伝子の部分配列をプローブとしてハイブリダイゼーション法によりスクリーニングを行い、いくつかの陽性クローンを得た。現在、これら陽性クローンの全塩基配列を決定している段階である。同時に、このcDNAライブラリーを利用して他のWntファミリー遺伝子ならびに、同様な分子構造を持ち、脂肪細胞分化に関与するといわれるレジスチン遺伝子についても平行してクローニングならびに塩基配列の解析を行なっている。また得られた分子の機能を解析するためにウシ筋細胞の初代培養細胞系を併せて作成しているがこれは現在もまだ、安定した筋衛星細胞を得るための条件検討を行なっている段階である。
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