(1)種々の濃度でのグルコース添加が雌雄比率におよぼす影響 屠殺場由来卵巣から卵子を吸引回収し、体外成熟・受精を行なった。授精後18時間に卵丘細胞を除去し、卵を低酸素条件下でグルコース非添加mSOF培地で培養し、授精後48時間に8細胞期胚を得た。これを3種のグルコース濃度(1、2.5及び4mM)を含むmSOF培地中で培養を行なった。媒精後8日目に胚盤胞期胚まで発生した胚を回収し、すべての胚の性をPCR法によって判定した。 その結果、1、2.5、4mMグルコースで培養した際の発生率は60、62、42%であり、4mMで有意に低下した。性比(雄の比率)は0.54、0.62、0.62となり、2.5mM以上のグルコース添加により有意に雄に偏ることが示された。 (2)受精卵が利用可能な他の単糖への置換が雄雌の比率に及ぼす影響 屠殺場由来卵巣から卵子を吸引回収し、体外成熟・受精を行なった。授精後18時間に卵丘細胞を除去し、卵を低酸素条件下でグルコース非添加mSOF培地で培養し、48時間後に8細胞期胚を得た。これを3種類の培養液(無糖mSOF、5.56mMグルコース添加mSOF、5.56mMフルクトース添加mSOF)で培養し、媒精後8日目に胚盤胞期胚まで発生した胚を回収し、すべての胚の性をPCR法によって判定した。 糖添加なし、グルコース、フルクトース添加それぞれの発生率は57、62および21%であり、5.6mMのグルコース添加は発生率を有意に低下させたが、フルクトースの添加は発生率を低下させることは無かった。性比も同様にグルコースでは有意に雄に偏った(0.67)がフルクトースでは(0.50)この偏りが見られなかった。 以上の結果より、2.5mM以上のグルコース添加により、胚の性は有意に雄に偏ることが示され、この偏りはグルコース特有のものであることが明らかとなった。
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