イヌのB細胞型リンパ球の抗体療法を検討するため、イヌのCD20抗原のクローニングを行い、正常リンパ球、B細胞型リンパ腫細胞、T細胞型リンパ腫細胞におけるCD20抗原の遺伝子発現についてRT-PCRにて解析を行った。 クローニングしたイヌのCD20遺伝子は1278bpで、297のアミノ酸残基をコードしていた。解析した遺伝子の塩基配列と、ヒト・マウスの遺伝子との相同性を確認した。Genbankに登録されているヒトCD20ゲノム(エキソン)との相同性が81.0%、マウスCD20mRNAとは71.8%と高い相同性を示したため、今回解析した遺伝子はイヌのCD20であると判断できた。 解析した遺伝子の塩基配列より、CD20のアミノ酸配列を同定した。同定したイヌのCD20アミノ酸配列は配列Fi.1に示した。 このアミノ酸配列とヒト・マウスの遺伝子との相同性を確認した。Genbankに登録されているヒトCD20のアミノ酸配列との相同性が72.8%、マウスでは68.2%と高い相同性を示したため、今回解析した遺伝子はイヌのCD20であると判断できた。 またヒトCD20膜外領域のアミノ酸配列とそれに相当すると考えられるイヌCD20のアミノ酸配列の相同性は66.6%であった。 イヌのリンパ系細胞における本遺伝子発現は、犬の正常リンパ球およびB細胞型リンパ腫細胞には認められたが、T細胞型リンパ腫細胞には発現が認められず、B細胞に特異的に発現していることが示唆された。このことから、抗CD20抗体を作成すれば、特異的にイヌのB細胞を認識すると考えられた。
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