研究概要 |
我々がすでに報告している犬凍結精液の作製法は、卵黄トリス-フルクトース-クエン酸液(EYT-FC)で精液を希釈し(1次希釈)、その後、凍結保護物質であるグリセリンおよび界面活性剤であるOrvus ES paste (OEP)を添加したEYTFCを点滴法で希釈し(2次希釈)、ストロー法で簡易凍結器を用いて凍結を行う方法であった。しかし、この方法だと精液採取から凍結処理までに時間がかかること、また、簡易凍結器という特別な大型の機械を使用することが問題となる。このため、これらの方法の簡便化を検討する必要が考えられた。そこで、実験1として、精液の希釈時間を短縮する方法、すなわち1段階希釈法の検討、また実験2として、簡易な凍結方法、すなわち発泡スチロールの中の液体窒素で凍結を行う投げ込み法の検討を行った。 その結果、実験1において、1段希釈法および2段希釈法(従来法)の問に、凍結融解後の精液性状には統計学的には有意差は認められなかったが、1段希釈法では精子活力に幅が見られた。これは、精子にとって有害な物質であるグリセリンやOEPを1度に希釈することによって、精子に与えるショックを大きくしてしまったため、精液性状が悪くなるものが生じたためであると思われた。実験2において、凍結融解後の精子活力および精子生存率は、簡易凍結器法に比較して投げ込み法で有意に高値を示した(それぞれ、p<0.01,p<0.05)。 以上のことから、犬凍結精液の作製法において、確実で、良好な成績が得るためには、希釈方法は従来の2段階で希釈することが望ましいことが明らかとなった。また、凍結方法として投げ込み法は簡便であり、簡易凍結器法に代わる方法として有効であることが明らかとなった。
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