1.Tsix遺伝子のジーントラップES細胞を用いたXist遺伝子領域のヒストンメチル化修飾の解析: 未分化状態のES細胞などと分化した体細胞とでは染色体DNAやヒストン蛋白質の修飾が異なることが知られている。未分化状態特異的なアンチセンス遺伝子の転写が、染色体DNAあるいはヒストン蛋白質の修飾変化を引き起こしセンス・パートナー遺伝子の制御を行っている可能性について調べるために、Tsix遺伝子トラップ細胞とその親株のマウス野生型雌ES細胞を用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)を行いヒストンメチル化修飾の変化について解析を実施した。その結果、未分化状態のトラップ細胞ではXist遺伝子領域のhistone 3 lysine 27残基(H3K27)のtri-methyl化修飾が野生型細胞に比較して顕著に増加していた。このことはアンチセンス転写の停止によってH3K27のトリメチル化が亢進した可能性を示す一方で、アンチセンスTsix遺伝子のトラップによってセンスXist RNAが増加しポリコーム蛋白質群が局所にリクルートされたことにより間接的に引き起こされた可能性も考えられる。現在、分化誘導時にどの様な変化が観察されるか解析を進めている。 2.テトラサイクリンによりTsix発現をコントロール可能なES細胞株およびマウスの作成: ES細胞のROSA26遺伝子座にテトラサイクリン・トランスアクチベータ(tTA)をノックインし更にTsix遺伝子内にテトラサイクリン反応性エレメント(TRE)を組み込むことによって、Tsix発現を制御可能な細胞株およびマウスの作成を試みている。平成16年度にはtTAノックインES細胞の樹立に成功したので、引き続き同細胞にTREノックインを行う予定である。
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