研究概要 |
○キサントンの細胞周期における影響 構造の類似したキサントン誘導体(以下キサントン)であるα、β、γマンゴスチンの殺細胞効果は増殖盛んな腫瘍細胞に対して強く,増殖能の低い正常細胞には弱いことをこれまでの研究で明らかにした。この結果からそれぞれのキサントンが細胞周期制御に強く関わることが予想され、キサントンの細胞周期に対する影響を大腸癌細胞DLD-1株を用いて研究した。その結果αマンゴスチンは細胞周期を正に制御するサイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の発現を下げ、負に制御するp27の発現を上昇させることにより細胞周期をG1期に停止させた。βマンゴスチンはサイクリン、CDKの発現を下げ、細胞周期をG1期に停止させた。γマンゴスチンはサイクリンD1の発現を下げ、細胞周期をS期に停止させた。また、α、γマンゴスチンは細胞周期停止に伴いアポトーシスを誘導するが、βマンゴスチンは細胞周期停止にアポトーシスを伴わなかった。α、β、γマンゴスチンの構造の違いは水酸基の数の違いであり、水酸基の数が多いほど癌細胞への殺細胞効果は強く、水酸基がメトキシ基に置換されることによって効果が減少することが明らかになった。これらの結果からキサントンの殺細胞効果には水酸基の数に依存しており、水酸基の数によって細胞周期への影響が異なることが明らかになった。(Bioorg.Med.Chem.に掲載) ○p53遺伝子欠損マウスを大腸癌発癌モデルとしたキサントンの抗腫瘍効果 Fujiiらの論文(Gut誌,2004)をもとにp53遺伝子欠損マウスを用いて大腸癌発癌モデル実験を試みたが、論文通りに硫酸デキストランを投与したところ、マウスの半数以上が死亡した。硫酸デキストラン濃度を論文記載より下げ実験を行ったが、大腸癌が誘発される前にリンパ腫が発生する個体が多く、抗腫瘍実験を行うに至らなかった。
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