ピンナトキシン類は1995年、上村らによって単離・構造決定された化合物群であり、Ca^<2+>チャネル活性化作用を示すことが知られている。我々はDiels-Alder反応を鍵工程とする計画に基づいて合成研究を開始している。これまでに二重ヘミケタール形成と分子内ヘテロMichael反応を組み合わせた新規ジスピロケタール構築法を開発し、C10-C31位部分に相当するフラグメントを立体選択的に得ることに成功している。本年度は全合成に向け、G環および炭素27員環の構築を行った。 C10-C31フラグメントのC31位保護基を選択的に除去した後、Dess-Martin酸化、Horner-Emmons反応、Wittig反応を順次行い、Diels-Alder反応の基質となるジエンを得た。望みとする立体配置をもつ化合物を得るためには、位置選択性は勿論のこと、高いエキソ選択性を示す求ジエン化合物を探索する必要がある。種々検討した結果、C1位とC6位の間で環を形成させたα-メチレンラクトンを求ジエン化合物として用いると完壁な位置選択性で反応が進行し、良好なエキソ選択性(72:28)が発現することが明らかとなった。これにより全合成に必要な不斉炭素の構築は完了したことになる。望みとする異性体のC10位保護基を除去し、Dess-Martin酸化とGrignard反応によりC10位にビニル基を導入した。次にラクトン環を還元してジオールへと導いた後、C1位へアジド基、C6位へアリル基を導入した。得られたトリエンを第二世代Grubbs触媒存在下、塩化メチレン中加熱環流したところ、炭素27員環をもつ化合物が収率89%で得られることが分かった。現在全合成達成に向けた変換を検討中である。
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