研究概要 |
本研究の第一の目的である、アニリンとVaska錯体より得られるイリジウムアニリド(I)錯体の一酸化炭素雰囲気下での分子内sp^2C-H結合活性化、これにより得られるイリジウムヒドリド錯体へのアセチレンの挿入反応について検討を行ったが、望むキノリン環を得ることはできなかった。しかしながら、本研究の第二の目的である、キノリン環含有抗腫瘍活性天然物であるカンプトテシンの類縁体ライブラリーの固相合成については、以下の4つの化学選択的パラジウム触媒反応を鍵反応とする別途合成法により達成し、50程度の誘導体を合成することができた。 1.薗頭反応による2,4-ジクロロー3-(ヒドロキシメチル)キノリンの固相担体への担持 2. 2-ヒドロキシピリジン誘導体のN-選択的アルキル化、続く2位塩素原子選択的分子内Heck反応 3. 4位塩素原子の鈴木-宮浦クロスカップリング反応、アミノ化およびチオエーテル化反応、ギ酸還元による官能基化 4. 6位ベンゼンスルホン酸エステルリンカーのギ酸還元による切断 現在、他の求核剤を用いた切断についても検討を行っており、さらなる多様性を有したライブラリーの構築を行っている。また、ベンゼンスルホン酸エステルリンカーのトレースレスリンカーとしての有用性を拡大するため、各種置換フェノールを担持し、いずれの置換様式においても利用可能な切断条件の最適化を行った。これまで、電子求引性基を有するフェノール誘導体においてのみ利用可能であったベンゼンスルホン酸エステルリンカーであるが、本切断条件により、電子供与性基を有するフェノール誘導体においても利用できるようになった。本方法論は、芳香族化合物の固相合成を簡便なものとし、医薬品や機能性材料の開発に役立つものと考えている。
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