1)実用的な触媒的不斉マイケル反応の開発 申請者らはすでにD_2対称型新規キラル4級アンモニウム塩を創製し、触媒的不斉マイケル反応で高いエナンチオ選択性が発現されることを報告している。触媒構造を種々変換し、その効果を精査したところ、芳香環に電子吸引基の存在が必須であることが分かった。特に2-CF_3基を有するキラル相間移動触媒を用いた場合には、最高で91% eeを達成することができた。さらに本反応系の拡張として、α位置換型のシッフ塩基を基質に用いたところ、速やかに反応が進行し目的とする不斉4級炭素の構築にも成功した。得られた生成物は効率良くキラルピロリドン誘導体に変換できることから、本反応系は含窒素複素環の合成へも展開できる。現在、天然物合成への応用も検討中である。マイケルアクセプター側を修飾しても反応は速やかに進行し、良好な不斉収率で目的物を与えることを見い出した。 2)ジアジエステルを用いる触媒的不斉Aldol-type反応の開発 反応性官能基であるジアゾ基の特性を活用してエナンチオ選択的な炭素-炭素結合生成反応の開発を検討したところ、キラル4級アンモニウム塩存在下、最高80% eeを達成した。得られた化合物は生物活性化合物の重要ユニットであるβ-アミノアルコールやβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体へ効率良く変換できることも見い出した。
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