C型肝炎は国内で約200万人もの感染者が存在するといわれ、発症者の大部分は肝癌へと進行する深刻な疾病であるが、現在、有効な化学療法が存在しておらず、C型肝炎ウィルス(HCV)の培養法が未だ確立されていないことが、新規治療薬の開発の大きな障害となっている。そこで、HCVが宿主へ侵入・感染する際に必須となるエンベロープ蛋白E1E2に着目し、エンベロープ蛋白E1E2と蛍光蛋白GFPを水泡性口内炎ウィルス(VSV)に発現させたHCVモデルウィルスを用いたHCV感染阻害活性試験によって新規抗C型肝炎リード化合物の探索を開始し、まず、保有している約400種の薬用植物抽出エキスに対してスクリーニングを完了した。また、モデルウィルスの宿主細胞に対する感染は、侵入過程はHCV由来E1E2によるものの、増殖過程についてはVSV由来のシステムを用いるため、抑制効果の見られたエキスが確実にE1E2を介した侵入阻害であることを証明する目的でVSVに対する阻害活性も検討した。その結果、HCVモデルウィルスの感染に対して高い阻害活性を示し、VSVの感染を抑制しない、すなわち、選択的にE1E2を介した侵入過程を阻害している数種の抽出エキスを見い出した。これらエキスより、溶媒分配に続くシリカゲルあるいはODSを用いたカラムクロマトグラフィーによって分離を進め、最終的にHPLCによって2種のエキスから4種の活性成分を単離した。現在、これら活性化合物についてNMRやIR、MSスペクトル等より化学構造の解明を行うとともに、他の候補エキスからの単離も進めている。
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