研究概要 |
D-カンファー誘導体の1,3-アミノアルコール(ジアミン)型触媒としての活用例は少なく、検討された不斉反応も限られている。その背景下、本研究ではカンファー特有の不斉環境を最大限活かした新規1,3-アミノアルコール(ジアミン)型キラル触媒の合成を行い、それらキラル触媒の不斉反応への適用を試みることにした。本年度に得られた研究成果を以下に示す。 1)カンファー型キラル触媒の合成 まず1,3-アミノアルコール型触媒として10-ジアルキルアミノイソボルネオールの合成を行った。具体的には塩化D-カンファースルホン酸を出発原料として用い、D-ケトピン酸へと変換後、アミド化続く還元反応により様々な種類のジアルキルアミノ基を有する1,3-アミノアルコール型触媒を合成した。ジアミン型触媒の合成に関しては、現在検討中である。 2)不斉求核付加反応への適用 アミノアルコール型触媒存在下、ベンズアルデヒドとジエチル亜鉛との反応を行い、反応条件(反応溶媒、反応温度)を詳細に検討した。その結果、室温下ヘキサン中での反応が効果的であり、ジアルキルアミノ部分にグラナタニン構造を持つアミノアルコール型触媒を用いたところ目的とするアルコール体を単離収率99%、光学純度94%eeで得ることに成功した。本勢媒は他の脂肪族、芳香族アルデヒドとの反応においても良好な不斉収率(最高95%ee)を与えることを見出した。また、ベンズアルデヒドのアルキニル化反応についても本1,3-アミノアルコール型触媒を用いることで不斉が誘起されることを確認している。今後、不斉アルキニル化反応の詳細な検討並びに芳香族ケトンとの反応に関しても検討を行っていく予定である。
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