研究概要 |
D-カンファー誘導体の1,3-アミノアルコール(ジアミン)型触媒としての活用例は少なく、検討された不斉反応も限られている。その背景下、本研究ではカンファー特有の不斉環境を最大限活かした新規1,3-アミノアルコール(ジアミン)型キラル触媒の合成を行い、それらキラル触媒の不斉反応への適用を試みることにした。本年度に得られた研究成果を以下に示す。 1)カンファー型キラル触媒の合成 新たな触媒として1,3-スルホンアミドアルコール型リガンド、1,3-ジアミン型リガンドの合成を行った。スルホンアミドアルコール型リガンドは昨年度の方法に従い合成した10-ベンジルアミノイソボルネオールから脱ベンジル化後、スルホニル化することにより得た(4種類合成)。一方、ジアミン型リガンドの合成に関しては、ボルナン骨格の2位に導入されたアミノ基の立体異性体(endo化合物とexo化合物)の立体選択的合成及びそれらの分離精製が困難であった。引き続き、ジアミン型リガンドの合成検討を行っていく予定である。 2)不斉求核付加反応への適用 ベンズアルデヒド及びアセトフェノンの不斉アルキニル化反応を検討した。ベンズアルデヒドの不斉アルキニル化反応の場合、トシルアミドを持つリガンドを用いることで収率86%、36%eeで目的とするアルキニル化合物が得られた。本反応をcis-2,6-ジメチルピペリジン構造を持つ1,3-アミノアルコール型リガンドを用いて行った場合、最高90%、31%eeと上記リガンドと同程度の結果を与えた。一方、アセトフェノンの場合、トシルアミドを持つリガンドが最も効果的であり、45%収率(原料回収42%)、27%eeで目的とするアルキニル化合物が得られた。しかし、これら反応における不斉収率は満足のいく結果とは言えない。今後リガンドの構造最適化を行い、さらなる不斉収率の向上を目指していく予定である。
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