最近、我々はケトンを酸化剤として用いるジオールの触媒的酸化的ラクトン化反応を開発した。本触媒は、中心金属のイリジウム、三座配位子のシクロペンタジエニル基、二座配位子のアミノアルコール部から構成される。ジオールの触媒的酸化的ラクトン化反応はジオールから一挙に二段階の酸化段階を経てラクトンを合成するものであるが、本反応を一級モノアルコールに適応したところ、アルデヒドが得られ、また基質によっては二量体エステルが生成することがわかった。そこで、今回、酸化的エステル化反応を効率良く合成する方法について検討した。本反応はジオールの酸化的ラクトン化反応と異なり、分子間反応なので、まず、本反応における触媒濃度の検討を行った。その結果、高濃度条件下で二量体エステルが生成しやすいことがわかった。また添加剤を検討したところ、炭酸カリウム存在下で収率が向上することがわかった。本反応は室温で進み、さらに適用可能な基質が脂肪族一級アルコールに限らず、種々の芳香族一級アルコールに適用可能であることがわかった。 本イリジウム錯体を用いる触媒反応では系内でヒドリド中間体が生成する。もし、このヒドリド錯体をアルデヒドに作用させれば、Tishchenko反応に展開できるのではないかと考えた。16電子配位不飽和イリジウム錯体に対し、2-プロパノール存在下でヒドリド錯体を調製し、Tishchenko反応を検討した。その結果、アセトニトリルや塩化メチレンなどの反応溶媒中で収率よく反応は進行した。この場合も炭酸カリウム存在下で収率は向上し、酸化的二量化よりも触媒量を低減することができた。また、反応も室温で進み、さらに適用可能な基質が脂肪族一級アルデヒドに限らず、種々の芳香族一級アルデヒドに適用可能であることがわかった。
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