研究概要 |
平成17年度における本研究の計画は,(1)固相合成用樹脂に固定した基質を用いる酵素反応系の開発(2)基質を固定した樹脂のアフィニティーカラムクロマトグラフィーへの応用(3)薬物代謝酵素の光反応性化合物を結合した基質認識性であった.本計画に基づき研究を行い,以下のような結果を得た. はじめに,反応基質を固相合成用樹脂に固定し,ラット肝S-9画分(ラット肝酵素)との反応を検討した.Tentagelに固定したβ位にヒドロキシル基を持つスルフィドをラット肝S-9画分に付した後,固相より切り離し,生成物を解析したところ,液層での反応よりも化学収率および立体選択性は劣るものの,目的とするスルホキシドへと変換されていることが明らかとなった. そこで,基質を固定した固相合成用樹脂のアフィニティーカラムクロマトグラフィーへの応用を検討した.はじめに,液層によるスルフィドの代謝は,酵素の阻害実験,あるいは熱処理により,FMOおよびCYP3Aが関与していることが示唆された.そのうえで,基質を固相に固定したものをカラムに充填し,可溶化したラット肝酵素を通導した.しかしながら,得られた画分は,溶出順序が遅くなるほど高い活性を示したものの,未だに複数の酵素の混合物であった.これについてはより最適な分離条件を検討中である. 一方,酵素精製に光反応を利用するために,基質にフェニルアジド基,トリフルオロメチルジアジリン基,ベンゾフェノン基などの光反応性化合物を結合して,液層でラット肝S-9画分による酵素反応を行った.トリフルオロメチルジアジリン基を導入した基質が最も効率よく酸化を受けた.今後はこのものを固相に固定し,その酵素反応について検討していく予定である. また,本研究方針を還元酵素にも応用する試みも行っている.
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