研究概要 |
これまでに,α-methylene-γ-butyrolactone構造を有するキク科植物由来セスキテルペンであるconstunolideやdehydrocostus lactoneなどがシステインやメルカプトエタノールなどに対し立体選択的マイケル型付加反応を起こることを明らかにしており,またconstunolideやdehydrocostus lactoneなどに認められた誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現抑制活性が,システインやメルカプトエタノールなどの付加体では活性が減弱することを見いだしている.これらの知見から,constunolideやdehydrocostus lactoneなどがタンパクのシステイン残基などと結合することによって,ターゲットタンパクの機能を消活しているものと推察し,同様の作用メカニズムを有する低分子リガンドを探索することを目的とする. 今年度は,マウス腹腔マクロファージを用いたリポ多糖刺激によるNO産生抑制活性を一次スクリーニングとし,各種炎症性疾患の治療や改善に用いられる世界各地の薬用植物から活性成分を探索した. その結果,スリランカやインド地域の伝統医学であるアーユル・ヴェーダやユナニー医学において炎症性疾患の治療に用いられている没薬から,5種のpolypodane型新規トリテルペンmyrrhanol A, Bおよびmyrrhanone A, A acetateおよびBなど計6種の新規化合物を単離・構造決定するとともに,myrrhanol Aをはじめ数種の含有テルペノイド成分にNO産生抑制活性が認められた.さらに,iNOSに及ぼす影響を検討したところ,myrrhanol Aは,iNOSに対する酵素阻害活性は殆ど認められず,iNOSの発現を抑制することが判明した.同様にエジプト地域に自生するヒガンバナ科植物のCrinum yemenseの球根部から3種の新規ヒガンバナアルカロイドyemenin A-Cを単離・構造決定するとともに,yemenin Aをはじめ数種の含有アルカロイド成分がiNOS発現抑制活性に起因するNO産生抑制活性を有することを見いだすなど,新しいタイプの天然由来化合物(低分子リガンド)にconstunolideやdehydrocostus lactoneなどと共通する作用メカニズムを見いだすなど,平成16年度の当初計画をほぼ達成したものと考える.
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