タンパク質の翻訳後修飾として糖鎖修飾はもっとも普遍的であるが、それらは構造上の特徴からN-結合型糖鎖とO-結合型糖鎖に分類されてきた。しかし、近年タンパク質の糖鎖修飾としてマンノースがトリプトファンに炭素-炭素結合した新規構造(C-結合型)が見い出されている。本構造はサイトカイン系などのタンパク質に見い出されており、また新たにマンノシル修飾されたタンパク質の種類の同定数も増えているが、その生物学的な機能については全く未知である。 研究代表者はすでにC-mannosyl tryptophan (C-Man-Trp)についての初の合成に成功している。今回、この知見をもとにC-Man-Trpの大量合成可能なルートの確立を行い、さらにC-Man-Trp含有ペプチドについて合成を行った。合成した糖アミノ酸、及び糖ペプチドを用いてC-Man-Trpに対する抗体を作成した。現在、抗体をもとにELISA法を確立しつつある。また、併行して病変モデルラットの臓器についてイムノアッセイにより、C-Man-Trpの存在量について調べた。その結果、糖尿病ラットの大血管においてC-Man-Trpの存在量が増加していることを明らかにした。このことはC-Man-Trpが疾病に対するバイオマーカーとして働きうることを示唆するものである。 また、糖尿病ラット大血管においてトロンボスポンディンの存在量についても増加していることがイムノアッセイ法により、明らかになった。トロンボスポンディンにおいてもC-Man-Trp修飾が見い出されていることをあわせて考えると、トロンボスポンディンへのマンノシル化修飾が糖尿病をはじめとする疾病と深い関わりがあると推定される。
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