各種難水溶性医薬品をポリビニルピロリドン(PVP)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と混合粉砕することで医薬品ナノ微粒子の調製を試みたところ、17種類の医薬品のうち、15種類の医薬品においてナノ微粒子形成が確認された。混合粉砕を行う際のDrug/PVP/SDS 3成分の組成と粒子径の関係を検討したところ、多くの医薬品において重量比1:3:1の組成が微粒子形成に最適な組成であることが明らかとなった。PVPとSDSを用いた3成分混合粉砕により微粒子形成が認められなかったトルブタミド、フルルビプロフェンについて、PVPのかわりに水溶性高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いてDrug/HPMC/SDS 3成分混合粉砕による微粒子調製を試みたところ、両薬物ともに400nm以下の微粒子形成が観察された。また、SDSのかわりに胆汁酸塩のデオキシコール酸ナトリウム(DCNa)を用いることでナノ微粒子化が進行する薬物も存在することから、医薬品に適した水溶性高分子や界面活性剤の選択が粉砕による医薬品のナノ微粒子化に重要であることが明らかとなった。 各種組成で調製した医薬品ナノ微粒子は水に分散後、少なくとも1ヶ月は安定であった。また、混合粉砕物として一定期間低湿度下で保存した試料を水に分散した際にも微粒子形成が確認された。 医薬品としてプロブコールを用い、プロブコールPVP/SDS3成分混合粉砕による微粒子形成に及ぼすPVP分子量の影響を検討したところ、PVP分子量の低下に伴い、生成する微粒子の粒子径が減少した。この微粒子生成にはプロブコール、PVP、SDS間の相互作用が関連していると考えられ、現在固体NMRを用いて検討している。
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