研究概要 |
(1)eRF3とPABPの相互作用解析 PABPおよびeRF3の細分化された各領域同士の相互作用を、NMRでの化学シフト変化ならびに等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用いて定量的に解析した。直接相互作用している最小領域はeRF3(64-94),PABP(541-623、PABCドメイン)であることを明らかにした。 また、eRF3(64-94)には、PABCに結合するPAM2と呼ばれるモチーフが2個存在し(モチーフ1、モチーフ2)、両者は一部重複しており、PABCはeRF3のモチーフ1に結合した状態とモチーフ2に結合した状態との間で化学交換していることが分かった。そこで、PABC-eRF3(モチーフ1)複合体、PABC-eRF3(モチーフ2)複合体それぞれの立体構造をNMR法により解析し、交換している2状態の立体構造を明らかにした。現在、この化学交換を伴うユニークな分子認識様式の生物学的意義を明らかにすべく、化学交換の抑制された変異体を用いて翻訳終結反応に対する影響を調べている。 (2)PABPの多量体化についての解析 前述のeRF3-PABPの相互作用は、細胞内では、mRNAの3'末端のポリA上で多量体化したPABPにより担われているが、ポリA上でのPABPの多量体化状態はこれまでに明らかになっていない。そこで、ポリA結合型PABPの多量体化状態を解明するため、ポリA-RNAの大量調製法を確立した。さらに、全長PABPおよびPABPの細分化された各ドメインの調製法を確立した。
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