研究概要 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAの蔓延は、対感染症薬剤療法への脅威となっている。MRSAは、耐性に必須なペニシリン結合蛋白質の遺伝子mecAを有するとともに、組換え酵素の遺伝子ccrA, ccrB, ccrCをも有している。これらの遺伝子によりコードされるCcr蛋白質は、耐性遺伝子カセットを部位特異的に切り出し、挿入する働きを持っており、薬剤耐性が蔓延する一因となっている。研究代表者は、耐性遺伝子組換反応がどのような三次元構造によって行われるのか明らかにするため、結晶化に向けたCcr蛋白質の発現と精製を進めてきた。 CcrB蛋白質については、E.coli発現系を用い、低温で培養することにより、上清画分に発現させた。これをクロマトグラフィー法により精製し、1回の培養あたり20mgの蛋白質試料を得た。組換え部位の塩基配列から核酸を設計し、得られたCcrB蛋白質との相互作用を検討したところ、21塩基からなる結合部位配列を明らかにできた。 単独で組換えを行うCcrC蛋白質については、Type-V耐性遺伝子を有するMRSAのゲノムDNAを鋳型とし、発現系を構築した。10種程度の大腸菌株を形質転換することにより、上清画分にCcrCが誘導できる発現株を樹立した。硫安沈殿による分画の後、クロマトグラフィー操作により精製蛋白質を得られる方法を確立した。結晶化に適した純度の蛋白質試料を、1回の培養あたり10mg得ることができた。
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