メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAの蔓延は、対感染症薬剤療法への脅威となっている。MRSAは、耐性に必須なペニシリン結合蛋白質の遺伝子mecAを有するとともに、組換え酵素の遺伝子をも有している。これらの遺伝子によりコードされる蛋白質は、耐性遺伝子カセットを部位特異的に切り出し、挿入する働きを持っており、薬剤耐性が蔓延する一因となっている。 研究代表者は、耐性遺伝子組換反応がどのような三次元構造によって行われるのか明らかにするため、構造生物学的研究を進めてきた。本年度は、同様の遺伝子組み換えに関わるVDE蛋白質を、薬剤耐性遺伝子組み換え機構のモデルとしてとりあげ、その結晶解析を行った。 昨年度までに得ているリコンビナントVDE粗精製画分を用い、VDE蛋白質を精製した。精製は、硫安沈殿による分画の後、カラムクロマトグラフィーにより行った。得られた精製蛋白質を用い、ポリエチレングリコールを沈殿剤として、金属イオン共存下でシッティングドロップ蒸気拡散法により結晶化した。 得られた板状結晶を抗凍結剤溶液に透析法により移し、大型放射光施設SPring-8において、極低温下で回折像データの測定を行った。デンシトメトリー処理により、2.5A分解能までの解説強度データセットを得、その同価な回折点の一致度(RmergeI)は0.061であった。 現在、分子置換法による初期モデル構築と結晶学的精密化を進めている。
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