本研究では哺乳類体内における複数の微量D-アミノ酸について、二次元一斉分析可能な高感度分析装置を世界に先駆けて開発する。また、様々なD-アミノ酸の組織分布を示した上で機能解明、疾病時における含量変化を解析する。本目的達成のため、平成16年度は下記の検討を行った。 不斉中心を2ヵ所有するD-アミノ酸の検討 現在、不斉中心を2カ所有するアミノ酸(タンパク質構成アミノ酸ではスレオニンとイソロイシン)については、どの異性体が生体内にどの程度存在するか不明である。そこで、D-アミノ酸二次元一斉分析システムを開発するに際し、分析対象とするアミノ酸を決定するため、スレオニンの異性体(D-及びL-スレオニン、D-及びL-アロスレオニン)を取り上げ、4種の異性体分析法を確立するとともに哺乳類体内における各異性体の存在を検討した。その結果、Capcell pak C18-AQ(移動相はアセトニトリル12%とトリフルオロ酢酸0.08%を含む水溶液)を用いてスレオニンとアロスレオニンを単離した後、Sumichiral OA-2500Sで光学分割し、双方のD体L体が良好に分析可能となった。 ラットを用いるD-アミノ酸の局在組織解明 上記の分析法を用い、4種のスレオニン異性体について組織分布を明らかにした。ラットを用いて中枢4組織、末梢8組織、血清及び尿における各異性体含量を測定した結果、D-スレオニンとD-アロスレオニンは大脳や線条体といった中枢組織に存在し、その含量はD-アロスレオニンの方が高いことが示された。一方でL-アロスレオニンはいずれの組織においても認められなかった。また、尿中においても多量のD-スレオニンとD-アロスレオニンが認められた。以上の結果から、アミノ酸一斉分析法開発に際しては、不斉中心を2カ所有するアミノ酸の異性体をいずれも分析対象とする必要があることが示された。
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