本研究では哺乳類体内における複数の微量D-アミノ酸について、不斉中心を2カ所有するアミノ酸を含め、これらを二次元-斉分析可能な高感度分析装置を世界に先駆けて開発する。また、様々なD-アミノ酸の組織分布解明を通して機能解析を行う共に、疾病との関連を検討する。本目的達成のため、平成17年度は下記の検討を行った。 不斉中心を2カ所有するD-アミノ酸の検討 不斉中心を2カ所有するアミノ酸について平成16年度に引き続き検討を行った。生体内でプロリンより生成するヒドロキシプロリンはプロリンの4位が水酸化されており、コラーゲンなどのタンパク質中での存在が多数報告されている。4位水酸基の立体異性によりトランス体とシス体が存在し、それぞれについて光学異性体であるD体とL体がある。この4種の異性体に、D-及びL-プロリンを含めた6種の異性体について二次元一斉分析法を検討した。その結果、Capcell pak C18-MG II(移動相はトリフルオロ酢酸0.02%を含むアセトニトリル水溶液のグラジエント溶離)を一次元目に用いて各アミノ酸を単離した後、二次元目にSumichiral OA-2500Rを用いて光学分割することで上記6種のアミノ酸光学異性体が良好に分析可能となった。 D-アミノ酸酸化酵素欠損マウスを用いる局在組織解明 上記の分析法を用い、6種のプロリン類縁体について血中含量を測定した。その結果、マウス血漿中においてD-プロリンとL-プロリン、トランス-L-ヒドロキシプロリンの存在が示された。そこで、D-プロリンについて中枢7組織、末梢11組織、血漿及び尿における定量を行った結果、D-プロリン含量は大脳や小脳といった中枢組織では低く、膵臓や腎臓で高いことが示された。また、尿中に極めて多量のD-プロリンが排泄されていることを初めて発見すると共に、この尿中D-プロリンの少なくとも一部は食餌や腸内細菌以外に由来することを示した。これは哺乳類体内においてD-プロリンが生成していることを示唆する重要な発見である。
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