SCF^<Fbs1>は細胞質において、N結合型糖鎖を有するタンパク質を認識して分解マーカーであるユビキチン鎖を連結するユビキチンリガーゼであり、プロテアソームによる糖タンパク質の分解において重要な役割を担っている。SCF^<Fbs1>の基質認識ユニットであるFbs1の糖タンパク質認識様式を解明するため、Fbs1の糖鎖認識ドメイン(SBD)を用いてNMRによる相互作用解析を行った。その結果、SBD上のβ3-β4、β9-β10ループが糖鎖のGlcNAc2部分と、β5-β6ループがマンノース残基と相互作用していることが判明した。また、安定同位体で標識した糖ペプチドをリガンドとして用いてFbs1のSBDとの複合体の^<15>N-edited NOESYスペクトルを測定した結果、このレクチンは標的糖タンパク質の糖鎖部分のみならず糖鎖結合部位にあたるアスパラギン残基ともコンタクトを形成していることが明らかとなった。PNGaseはプロテアソームの分解標的となる糖タンパク質の糖鎖結合部位のアスパラギン残基側鎖を攻撃して糖鎖を遊離すると考えられているが、Fbs1存在下ではリボヌクレアーゼBに対するPNGaseの作用が阻害されることが示された。以上の結果より、Fbs1は糖鎖還元末端近傍を認識することにより変性状態にある糖タンパク質と特異的に相互作用しており、さらに基質上にポリユビキチン鎖を形成している間、基質の糖鎖をPNGaseから保護していることが明らかとなった。
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