研究概要 |
TOK-1は、我々が新たに単離したp21Cip1/Waf1/Sdi1(p21)結合蛋白質である。TOK-1には、3つのアイソフォームα,β,γが存在し、α型はp21のCDK2抑制活性を増強する。TOK-1αはp21蛋白質のC末端領域に結合するが、同様の領域にはPCNA以外にもC-MYCやSET/TAF1,calmodulin, HPV E7,GADD45,C/EBPα等が結合することが知られており、これら蛋白質とp21との相互作用により多様な細胞機能が制御されているものと考えられる。さらにTOK-1αは、乳癌原因遺伝子産物であるBRCA2蛋白質にも結合し、乳癌細胞を含む種々の癌細胞の増殖を抑制することが報告されている。このようにTOK-1αは、C-MYCとは相反した癌抑制的な機能を持つことが推測される。前大会において、TOK-1αとC-MYCはp21を介さずに直接結合すること、C-MYCの転写活性化能をTOK-1αが抑制することを報告した。今回、アイソフォームα,β,γ間での機能の差異について解析を進めたので報告する。 E-box部位を4つ並べた合成レポーターを用い一過性発現系にて転写アッセイを行ったところ、TOK-1α,β,γともにC-MYCによる転写活性化を抑制したが、β型が最も強い抑制能を示した。他方、E-box部位を二つ持つヒトテロメラーゼ触媒サブユニットのコアプロモーターを用いた転写アッセイでは、TOK-1α,β,γともにC-MYCによる転写活性化を逆に促進した。免疫沈降実験によりTOK-1α,β,γ各々とC-MYCが細胞内複合体を形成し、p21はこの複合体中にはほとんど含まれないことが観察されたことから、TOK-1とC-MYCは直接相互作用し機能している可能性が示唆された。一方で細胞内の局在は、TOK-1α,βがC-MYCとともに核内に存在するが、γ型は核内にも存在するものの細胞質に多く分布していた。以上の結果から、TOK-1各種アイソフォームが直接C-MYCの転写機能を制御する以外に、他の因子の関与あるいは複数の経路による転写制御機構が存在する可能性も考えられた。
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