研究課題
血管内皮細胞は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、セリンプロテアーゼThrombin、腫瘍壊死因子TNF-αなどのアゴニストの存在により活性化される。臍帯静脈(HUVEC)を用いたこれらの血管新生関連刺激に伴う遺伝子変動の網羅的探索、時間的制御の比較システム解析から、これら活性化シグナルは転写カスケードを介して経時的に接着因子、増殖因子の発現誘導へと推移していくことが共通に認められた。そして特に刺激初期においてはthrombinとVEGFのシグナルの共通項が大きいこと。その共通項において最も強く両刺激で誘導される因子として、ダウン症候群関連因子、Down Syndrome Critical Region(DSCR)-1が見出された。RNase protection assay,ゲルシフト解析、点変異プロモーター解析、co-transfection解析よりDSCR-1はVEGF-flk-1/KDR-1及びthrombin-PAR-1の両レセプターの活性化を介して、転写因子GATA-2/-3,NF-ATc, NF-ATpが活性化され、それに続くinternal promoterの転写活性化により誘導されること。又、DSCR-1の安定的発現系をアデノウイルスから構築した状態ではNF-ATのさらなる核内移行が完全に阻害され、かつ本条件下で3次元コラーゲンゲル培養、FACS解析、マイクロアレイ解析を行った結果、DSCR-1が血管新生、炎症を含む内皮の活性化状態を顕著に抑制することが明らかとなった。さらにこの効果が実際にin vivoの系であてはまるかどうか確かめるために、マウス皮下でのmatrigel-plugアッセイ、腫瘍(メラノーマ)移植での抗癌活性を調べたところ、DSCR-1発現に基づくmatrigel内への微小血管内皮の遊走能の減少、及び腫瘍増大率の減少効果が有意に認められた。このDSCR-1が細胞内の因子であることから、これが将来毒性の少ない新規な抗血管病治療法として用いられることが期待される。
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