研究課題
マスト細胞はIgEを介する抗原抗体反応を初めとする多彩な刺激により活性化するが、近年研究代表者を含む複数のグループにより、IgEがマスト細胞に結合する感作のステップにおいてもマスト細胞が活性化すること(単量体IgE応答)が見いだされた。この応答は抗原非存在下で起こることから、高IgE血症を伴う慢性アレルギーの病態形成に関わるものと推察されている。本研究の目的はIgE感作によるシグナル伝達機構の解明、およびその抗原抗体反応との相違を明らかにすることである。昨年度見いだした単量体IgE応答におけるPKCβIIの重要性に関してさらに検討を進め、以下の知見を得た。1)PKCβIIを発現しないP-815/FcεRIマスト細胞株では、抗原抗体反応は起こるものの単量体IgE応答は起こらなかった。しかし、PKCβII遺伝子を導入することにより、単量体IgEによるCa^<2+>流入応答が回復した。2)単量体IgEに対して応答性の高いMC9細胞に対して、ドミナントネガティブ効果を有する変異体PKCβII遺伝子をレンチウイルスにより導入したところ、単量体IgEによるCa^<2+>流入は抑制されたが、抗原抗体反応によるCa^<2+>応答は影響を受けなかった。3)同じ条件下、同様に変異体PKCβII遺伝子の発現により、単量体IgEによるヒスタミン合成、IL-6産生は有意に抑制されたが、抗原抗体反応による両応答は変化しなかった。4)単量体IgE刺激によりPKCα、PKCβI、PKCβIIの全てで僅かではあるが膜画分への移行が観察され、その中ではPKCβIIが最も顕著な変化を示した。以上の知見、および前年度の結果から、関与する容量依存性Ca^<2+>チャンネル、およびPKCβIIという二つのシグナル分子において、単量体IgE応答は抗原抗体反応とは質的に区別されうるものであると考えられた。
すべて 2005
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