ファイトスフィンゴシンは酵母から動物細胞まで広く生体内に存在する主要なスフィンゴ脂質分子種である。申請研究により出芽酵母にファイトスフィンゴシン処理を行うとトリプトファンの取り込みを行う透過酵素Tat2pの量が減少し、その減少にFpr1Pというタンパク質が関わっていることを明らかにした。このTat2pの量が減少は、ファイトスフィンゴシン添加後、比較的速やかに起こり、これには、今まで予想されてきた分解経路を介するものと共に、細胞表面からの消失という機能的な意味での不活性化、さらにはファイトスフィンゴシンを添加したことによる遺伝子発現抑制という、複数の機構が関係していた。これら異なる系で協同的に制御されていることは、細胞にとって細胞外から栄養分を取り込むといった非常に重要な因子にとっては自然なことなのかもしれない。一方、ファイトスフィンゴシンは熱ストレスにより一過的に量が上昇すること、この処理は細胞の増殖を一時的に停止させ、その時に細胞内のカルシウムイオンの上昇も起こることが報告されているが、両者の関連をはじめとして、今回申請者が明らかにしたアミノ酸トランスポーターの制御にどう関わるかを複数の系で総合的に解析されたことはない。このTat2pなど、アミノ酸トランスポーターの細胞での変化が、熱ストレスと関連してどう制御されているかをここで使用した解析系を活用し総合的に解析していくこと、また、このときトリプトファン以外のトランスポーターとの関連も調べることが今後の課題であるとわかった。
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