研究課題
個体は分化した特有の機能を持った様々な細胞から構成されおり、そのゲノム配列は基本的にはすべての細胞において同一である。個々の細胞が特有の遺伝子発現をするためには、エピジェネティクスによる制御が重要となる。そして、エピジェネティクス制御異常はがんなどの疾病の原因となる。本課題においては、エピジェネティクス制御因子の生物学的役割の解明とがん化に対する影響を明らかにすることを目的に、以下の2点を中心に行った。1)ヒストン修飾酵素およびクロマチン形成因子と相互作用する因子の解析酵母サイレンシングに関与するヒストンアセチル化酵素であるSAS複合体と相互作用するクロマチン形成因子Asf1pに結合する因子をGSTとの融合タンパク質を用いることにより精製し、質量分析により同定(p130)した。ASF1遺伝子破壊株はDNAに損傷を与えるブレオマイシンに感受性を示すが、p130をコードする遺伝子の破壊はその感受性を軽減することが明らかとなった。また、p130はAsf1pと異なるクロマチン形成因子と相互作用することも明らかとなった。2)発がん過程に発現変化するエピジェネティクス制御因子の機能解析肝化学発がんの腫瘍マーカーであるグルタチオントランスフェラーゼ(GSTP)陽性前がん病変において発現上昇するエピジェネティクス制御因子として、ヒストンアセチル化酵素MOZ, HBO1を同定した。前がん病変において発現誘導したMOZは転写因子Nrf2/MafKに作用して、GSTPのプロモータ活性を増加させている可能性が示唆された。HBO1には複数のスプライシングバリアントが存在することが明らかとなり、肝前がん病変における発現上昇の割合はバリアントにより異なることが示された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Nucl.Acids Res. 33巻・8号
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